「電子楽器の変遷」と書いてGoogleで検索をかけると、ヒットする多くはシンセサイザーの歴史を取り上げたもののようです。しかしここで語るのはそれ以前のお話し。
そもそも電子楽器とは、音となる源信号を電子的に生み出している楽器を指しています。アコースティック楽器に電気的なピックアップを付けたものやエレキギターは電気楽器といいます。
テルミンが世界初の電子楽器であると広く言われていますが、テルミンで使われている真空管が発明(1907)される以前、1897年に米国のサディウス・ケイヒルが特許を取得したテル・ハーモニウムという多重交流発電機で音程を作り出す楽器があったようです。これを電子楽器とすると電子楽器はその誕生から鍵盤楽器であったということになります。
音を生み出すために電気信号を使うことは良いですが、その電気信号を作るために回転する機械が必要であるというのはエレガントさに欠けます。時代の制約からすれば避けられないことですが、個人的には可動部分のある機械で音を作る楽器は電子楽器とは呼びたく無い。
(余談ですが、それを言い出せば現代の大容量メモリの標準であるディスクドライブだって本質は同じなんだけど、これも将来的には消えてゆく技術でしょう。)
ということで、ここでは通説と同じに1917年頃にソ連のレブ・セルゲイヴィッチ・テルミンによって発明されたテルミンを電子楽器の原点と考えることにします。
テルミンのように、音の高さが連続的に変化する楽器をポルタメント系の楽器を言うそうですが、このタイプの楽器は音階に合わせた音を出すことが楽器を演奏する上で神経を使う主要な作業であることは想像に難くないことです。事実、テルミンの次に電子楽器の歴史に名前の出てくるポルタメント系楽器、オンドマルトノは、こった構造になっています。元々連続的な周波数の音が出てしまう楽器の音を音階に会わせるために、周波数コントローラのつまみに紐を付けて、紐の引き加減の目安のために音のでない鍵盤を用意するということまでしています。
その後最近までオモチャ屋さんで売っていたシッポナールの属するリボンコントローラの原型が出現するようです。その他にもダイヤルを回して音程を決める楽器もあるようですが、音程合わせに神経を使うポルタメント系は下火になり、電子楽器の主流は鍵盤楽器(シンセサイザー)に移っていきました。(つづく)